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つわりで仕事を休めないときの対策!使える制度と対処法を解説

つわりで体調がつらいのに、「人手が足りないから」「まだ妊娠を報告していないから」といった理由で仕事を休みづらいと感じている人は少なくありません。妊娠・つわりの時期は自分で選べないため、繁忙期と重なってしまうこともあります。

この記事では、つわりで仕事がつらいときに使える公的な制度や、上司への伝え方の工夫、非正規雇用の場合の注意点まで、厚生労働省・協会けんぽの情報をもとに整理しました。「休みたいけど休めない」と一人で抱え込む前に、使える選択肢を知っておきましょう。

目次

つわりで「仕事を休めない」と感じる背景にある具体的な事情

「休みたいのに休めない」と感じる背景には、職場や雇用形態ごとに異なる具体的な事情があります。

人手不足の職場で代わりがいない

複数の業務を一人で担当していたり、シフト制で代わりの人員を確保しにくかったりする職場では、「休むと周囲に迷惑がかかる」という申し訳なさが休みにくさにつながります。学級担任や専門職など、代替要員の確保が構造的に難しい職種ではこの傾向が特に強く見られます。

また「つわりは病気ではない」という周囲の認識から、症状の重さが軽視されやすいことも、休みを切り出しにくくする一因です。職場によっては、応援や派遣スタッフを一時的に手配できる場合もあるため、まずは相談してみる価値はあります。「休んだら評価が下がるのでは」という不安から無理をしてしまう人も多いですが、体調を崩して長期離脱するほうが結果的に職場への影響が大きくなることも少なくありません。

安定期前でまだ妊娠を報告できていない

つわりが最もつらいのは妊娠5~16週頃で、多くの人が「安定期」と呼ばれる16週以降を待ってから職場に報告しようと考えます。しかし、つわりが重い時期はまさにこの報告前の期間と重なりやすく、体調がつらくても誰にも相談できない状態に陥りやすい構造的なジレンマがあります。ある調査では、働く妊娠中の女性の7割以上が「お腹が目立たないうちにいつ妊娠を明かすか」で悩んだと回答しており、上司への相談率は2割程度にとどまっています。

報告のタイミングに正解はありませんが、体調が優れないまま無理をして働き続けると、かえって周囲に心配をかける結果になることもあります。直属の上司一人にだけ先行して伝え、他のメンバーへの公表時期は自分で決めるという方法を取る人も少なくありません。

非正規雇用で休むと収入が減ってしまう

パート・契約社員・派遣社員など時給制や出来高制で働いている場合、休むことがそのまま収入減に直結しやすく、正社員よりも経済的なハードルが高くなりがちです。有給休暇の付与日数が少ない、あるいはまだ付与されていない段階で妊娠が判明するケースもあり、休むこと自体への心理的・経済的な負担が重なりやすい傾向があります。

契約更新の時期と重なる場合、体調不良を理由に不利な扱いを受けるのではと不安になる人もいますが、妊娠・出産を理由とした不利益な取り扱いは法律で禁止されています。収入面の不安がある場合は、後述する傷病手当金のような公的な所得保障の制度も選択肢に入れて検討してみましょう。まずは自分の雇用契約や社会保険の加入状況を確認しておくことが第一歩です。

つわりで使える母性健康管理指導事項連絡カードで会社の対応を制度化する

「上司の理解次第」で配慮の有無が左右されがちな状況を、会社の義務として制度化できるのが母健連絡カードです。

母健連絡カードで医師の指導を会社に正式に伝える仕組み

母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)は、医師が妊婦健診で行った指導内容を、女性労働者が正確に事業主へ伝えるための公式書式です。つわりや妊娠悪阻は記載対象となる代表的な症状で、健診の際に「つわりで仕事がつらい」と具体的に伝えれば、医師の判断でその場でカードを発行してもらえます。

カードを事業主に提出すると、均等法13条に基づき、事業主は通勤緩和・勤務時間短縮・休業など記載内容に応じた措置を講じる義務を負います。カードの様式は厚生労働省のホームページや母子健康手帳に掲載されており、健診の際に持参しておくとスムーズです。指導事項の欄には、つわりのほか、妊婦貧血や切迫流産、不安・不眠といったメンタル面の症状も記載対象に含まれます。

カードがなくても口頭の申告で会社に対応義務が生じる場合

母健連絡カードは提出すれば会社の対応義務を明確にできる便利な書式ですが、必須というわけではありません。労働者本人の申告で症状の内容が明らかであれば、カードがなくても事業主は同様に措置を講じる必要があるとされています。

とはいえ、カードがあることで「配慮してもらえるかどうかが上司の個人的な裁量」から「会社としての義務対応」に変わるため、可能であれば取得しておくことをおすすめします。パート・契約社員・派遣労働者もこの制度の対象に含まれます。とはいえ、口頭の申告だけでは内容の記録が残りにくく、後から「聞いていない」といった行き違いが起こる可能性もあります。症状や希望する配慮をメールなど記録が残る形でも会社に伝えておくと、双方にとって安心材料になります。

つわりの通勤緩和や勤務時間短縮など会社に求められる具体的な措置

均等法13条に基づき、会社が講じるべき具体的な措置の内容を整理しました。

時差出勤やフレックスタイムで通勤の負担を減らす

均等法13条の通勤緩和措置には、始業・終業時刻に30~60分程度の時差を設ける時差出勤、フレックスタイム制の適用、1日30~60分程度の勤務時間短縮、通勤経路や交通手段の変更などが含まれます。満員電車のにおいや混雑が症状を悪化させる場合、時差出勤だけでも負担が大きく変わることがあります。休憩時間の延長や回数の増加といった措置も、同じ枠組みで請求できます。

これらの措置は、会社の就業規則にテレワークやフレックスタイムの制度がなくても、個別の配慮として実施を求められる点が重要です。満員電車を避けるために始業時刻を1時間ずらしてもらう、休憩時間を分割して取れるようにしてもらうなど、自分の症状に合わせた具体的な希望を伝えることで、より実情に合った対応を引き出しやすくなります。

軽易業務転換を会社に請求する権利(労基法65条3項)

労働基準法65条3項は「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない」と定めています。重い荷物を扱う業務や長時間の立ち仕事がつらい場合、この条文に基づいて他の業務への転換を請求できます。あわせて労基法64条の3では、妊産婦を重量物の取り扱いや有害ガスが発生する場所など、母体に有害な業務に就かせてはならないと定められています。

転換先の業務がない場合、会社が新たに軽易な業務を作る義務までは負わないという解釈が一般的ですが、可能な範囲での配置転換や業務内容の調整は求められます。立ちっぱなしの接客業務からレジや事務作業への一時的な変更、重い荷物の運搬を他のスタッフに代わってもらうなど、具体的な代替案を自分から提案すると、会社側も対応しやすくなるでしょう。

つわりでどうしても休む必要があるときの傷病手当金

通勤緩和などの措置だけでは対応しきれず、休業が必要になった場合の所得保障の仕組みを紹介します。

支給条件と標準報酬日額の3分の2という支給額の計算方法

健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やけがで療養のため働けず、連続する3日間を含めて4日以上休業し、その間給与の支払いがない場合に支給されます。つわり・妊娠悪阻も傷病手当金の支給対象に含まれます。支給額は、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均を30で割った「標準報酬日額」の3分の2で、支給期間は開始日から通算して最長1年6か月です。

申請には「健康保険傷病手当金支給申請書」に医師の意見書と事業主の証明を添えて提出します。たとえば標準報酬月額が20万円の場合、標準報酬日額はおよそ6,667円となり、その3分の2にあたる約4,445円が1日あたりの支給額の目安です。給与が一部支払われている場合でも、その額が傷病手当金より少なければ差額が支給されます。

※国民健康保険加入のフリーランス・自営業は対象外

傷病手当金は健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に加入している人が対象で、国民健康保険には原則として同様の法定給付がありません。そのため、フリーランスや自営業として働いている人がつわりで働けなくなった場合、この制度による所得保障は基本的に期待できない点に注意が必要です。パート・契約社員であっても、勤務先の社会保険に加入していない場合は同様に対象外となるため、自分がどの保険に加入しているかを事前に確認しておきましょう。

一部の自治体では国民健康保険に独自の傷病手当金制度を条例で設けている場合もありますが、対象や支給額は自治体ごとに異なり、一般的なつわりによる休業までカバーしているケースは多くありません。

つわりに悩む非正規雇用(パート・契約社員・派遣)で気をつけたいポイント

雇用形態によって制度の適用範囲が変わる部分があるため、非正規雇用の場合に特に押さえておきたい点を整理しました。

派遣社員は派遣元・派遣先の両方に相談しなければならない

母健連絡カードや通勤緩和などの母性健康管理措置は、雇用形態を問わずパートタイム労働者・契約社員・派遣労働者にも適用されます。ただし派遣社員の場合、実際の勤務指揮を行う派遣先にも配慮義務が及ぶため、体調不良や必要な措置については派遣元・派遣先の両方に伝えておく必要があります。どちらか一方にしか伝えていないと、必要な配慮が実際の勤務先に反映されないことがあるため注意しましょう。派遣元の担当者に相談する際は、母健連絡カードのコピーを渡し、派遣先にどのように伝えてほしいかを具体的に依頼しておくとスムーズです。

契約更新の時期が近い場合は、体調と契約継続の希望をあわせて派遣元に伝えておくことも大切です。症状が落ち着くまでの見通しを共有しておくと、更新時のやり取りもスムーズです。

社会保険への加入状況で傷病手当金の対象かどうかが変わる

パート・契約社員の場合、そもそも勤務先の社会保険(健康保険)に加入しているかどうかを最初に確認する必要があります。週の所定労働時間が短いなどの理由で社会保険に加入しておらず、配偶者の扶養や国民健康保険に加入している場合、傷病手当金の対象外になります。有給休暇についても、労基法上は勤続6か月・出勤率8割以上で比例付与されますが、正社員より付与日数が少ないことが多く、急な休みで有休を使い切ってしまう不安も抱えやすい点は理解しておきましょう。

自分が社会保険に加入しているかどうかは、給与明細の控除項目や健康保険証の保険者名で確認できます。「協会けんぽ」や健康保険組合の名称が記載されていれば対象になりえますが、「国民健康保険」やご家族の扶養に入っている場合は対象外です。

つわりについて上司や会社への伝え方・報告のタイミング

母健連絡カードなどの制度を実際に活用するために、上司への伝え方と報告のタイミングを整理しました。

安定期を待たずに伝えたほうがよいケース

均等法上の母性健康管理措置や母健連絡カードは、妊娠が判明した時点から利用でき、安定期を条件としていません。つわりの症状が業務に支障が出るほど強い場合や、立ち仕事・力仕事などの場合は、安定期を待たずに早めに伝えることが推奨されます。「いつまで伏せておきたいか」という希望もあわせて伝えれば、必要な配慮を受けながら周囲への公表タイミングを自分でコントロールしやすくなります。

力仕事や長時間の立ち仕事、化学物質を扱う業務など、母体への影響が懸念される業務に就いている場合は特に、早期の報告と業務調整が重要になります。「誰に、いつ、どこまで伝えるか」を自分の中で整理しておくと、いざ伝える場面で慌てずに済みます。

診断書や母健連絡カードを添えて伝える効果

口頭だけで体調のつらさを伝えるよりも、診断書や母健連絡カードといった客観的な書類を添えることで、会社側も対応の根拠を持ちやすくなります。直属の上司に個別に、可能な業務と難しい業務を具体的に伝えるとともに、簡潔なメモや文面も残しておくと、後から「言った・言わない」のすれ違いを防ぎやすくなります。社内に産業医や保健師がいる場合は、母健連絡カードの内容をもとに就業上の配慮を会社側へ助言してもらうことも可能です。

書類を渡すタイミングは、業務が落ち着いている時間帯や、上司と二人で話せる機会を選ぶと、落ち着いて話を進めやすくなります。伝える際は「配慮してほしいこと」と「引き続き対応できること」の両方を整理して伝えると、会社側も具体的な対応を検討しやすくなるでしょう。

つわりに関するマタニティハラスメントを感じたときの相談先

母健連絡カードの利用や休業の申し出を理由に不利益な扱いを受けた場合の法的な禁止規定と相談先を紹介します。

均等法が禁止する不利益な取り扱いの具体例

均等法9条3項は、妊娠・出産や、労基法上の休業の請求・取得などを理由に、解雇その他の不利益な取り扱いをすることを禁止しています。これには母性健康管理措置の申出・利用、軽易業務転換の請求、つわりの症状による労務不提供なども含まれます。禁止される不利益取扱いの具体例には、解雇、契約更新拒否、降格、減給、不利益な配置変更などが挙げられます。

こうした不利益取扱いは、たとえ会社側が「業績評価の結果」などの別の理由を挙げていたとしても、妊娠・出産に関する事由が実質的な理由になっていれば違法となる可能性があります。不利益な扱いを受けたと感じた場合は、やり取りの日時や内容をメモやメールなど記録に残る形で保存しておくことが、後の相談や対応の際に役立ちます。

都道府県労働局の雇用環境・均等部への相談方法

社内でマタハラに関する相談窓口が機能しない、あるいは相談しづらいと感じる場合は、都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」に相談する方法があります。均等法や育児・介護休業法に関する労働者と事業主間のトラブルについて、無料で相談でき、会社を通さず労働者本人が直接連絡できます。

必要に応じて労働局長による助言・指導・勧告や、専門家による調停制度も利用できるため、一人で抱え込まず外部の相談窓口も選択肢に入れておきましょう。相談は電話でも可能で、会社名を伝えずに一般的な制度について確認するだけの利用もできます。必ずしもすぐに会社への調査や指導につながるわけではありません。

まとめ

つわりで仕事を休めないと感じたときは、まず母健連絡カードを使って医師の指導内容を会社に正式に伝えることで、配慮を「個人の裁量」から「会社の義務」に変えられます。通勤緩和や軽易業務転換も、法律上の権利として請求できる措置です。

それでも休業が必要な場合は、傷病手当金という所得保障の選択肢があることも知っておきましょう。非正規雇用の場合は、社会保険への加入状況によって制度の適用範囲が変わる点に注意が必要です。不利益な取り扱いを受けた場合は、社内だけでなく都道府県労働局にも相談できます。

「休むこと」を甘えだと感じてしまう人もいますが、これらの制度はすべて正当な権利として用意されています。一人で無理をしすぎず、使える制度を知ったうえで、自分に合った対処法を選びましょう。

参考文献

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